家を購入する際には、どれくらいの頭金が必要なのか、多くの人が考えるでしょう。
貯金してから購入するべきか、低金利のうちに購入するべきか、迷ってしまいますよね。
正直に言いますと、頭金の目安は物件価格の10%前後です。
これは、仲介手数料などの諸費用の分に相当しますが、諸費用は住宅ローンで借りることができない銀行が多いのです。
この記事では、こういったお悩みに答えていきます。
具体的には、どのくらいの頭金があれば家を購入できるのか、じっくり貯金してから購入するべきなのか、頭金が少なくても低金利のうちに購入するべきなのか、すでに貯金がある場合、どれくらいの頭金にして、どれくらい残すべきなのか、親から援助してもらう場合、非課税になる限度額はどれくらいなのか、といったことについてお話しします。
最後までお読みいただき、家の購入に向けて第一歩を踏み出しましょう。
不動産業者が考える頭金の目安と相場
不動産業者の立場から考えると頭金はいくらあると安心して購入できるのでしょうか。
頭金は物件価格の10%が目安
家を購入する場合に必要な頭金には、いくつかの要素があります。
まず、物件価格の10%を目安にするのが一般的です。
これは、家の代金だけでなく、手付金、仲介手数料、登記費用、印紙税、ローン手数料、火災保険料などの諸費用も含まれているからです。
諸費用には一部、住宅ローンで借りることが難しいものもありますので、自己資金を用意する必要があります。
一部の広告では、「頭金ゼロ円で買えます」と謳っていることもありますが、実際には家の代金は住宅ローンでまかない、その他の諸費用は自己資金で用意するのが一般的です。
ただし、最近では、諸費用についても住宅ローンで借りることができる金融機関が増えてきました。
大手の都市銀行ではあまり対応していないケースもありますが、ネット銀行では諸費用も含めた借り入れが可能な場所が多くなっています(イオン銀行やじぶん銀行など)。
ただし、金融機関の選択肢を広げるためにも、物件価格の10%前後の自己資金を用意しておくことが望ましいです。
これによって、あなたの選択肢を広げることができます。
物件本体以外に諸費用も必要
住宅を購入する際には、中古物件と新築物件、または建売りと注文住宅のような要素によって、さまざまな費用がかかります。
具体的には以下のような費用があります。
手付金:住宅の売買契約を結ぶ際に、物件価格の約5~10%ほどの手付金を支払う必要があります。
残りの金額は後日住宅ローンなどで支払うことになります。
手付金を支払うタイミングは早めなので、自己資金を用意する必要があります。
仲介手数料:新築マンションを購入する場合は不要ですが、中古物件を購入する際には仲介手数料が必要になります。
仲介手数料の計算方法は異なる場合がありますが、一般的には物件価格の3%に6万円を加えた額に消費税を加算したものです。
ただし、売主の不動産会社から直接購入する場合は仲介手数料は発生しませんが、不動産会社を介して購入する場合には仲介手数料がかかる場合があります。
登記費用:不動産の登記をするためには、登録免許税と司法書士の報酬が必要です。
印紙税:売買契約書やローンの契約書などに貼る印紙代です。
物件価格に応じて金額が変わります。
ローン手数料:住宅ローンを組む際に金融機関に支払う手数料です。
金融機関によって異なりますが、借入金額の約2%前後が一般的です。
各種保険料:住宅を購入する際には、火災保険料や団体信用生命保険料が必要です。
金額は金融機関によって異なり、金利に上乗せする形式や一括で支払う形式があります。
頭金の貯め方
家を買うために必要な頭金を貯めるためには、財形住宅貯蓄という制度を利用するのがおすすめです。
財形住宅貯蓄は、給与から自動的に一定額が天引きされ、毎月コツコツと貯金をする仕組みです。
これは、積立定期預金に似た制度です。
貯蓄の残高が550万円までは、利子に課税がかからず非課税となります。
さらに、財形住宅貯蓄を利用すると、財形持家融資も受けられるのです。
これは貯金が自動的に増えていくという点がポイントです。
もし、財形住宅貯蓄が利用できない場合には、非課税ではありませんが、銀行の積立定期預金を利用することも考えてみると良いでしょう。
不動産購入後の貯金残高について
家を購入する際には、購入時にかかる費用だけでなく、その後の維持費や住宅ローンの支払いも考慮する必要があります。
そのため、頭金の支払いにすべての貯金を使うのではなく、一定の貯金を残しておくことが重要です。
たとえばマンションを購入する場合、修繕積立金や管理費、駐車場代など、毎月の維持費がかかります。
また、固定資産税は年に一度支払う必要がありますので、年間で見ると40万円以上かかることが多いです。
一方、戸建てを購入する場合は、修繕積立金は徴収されませんが、将来の外壁工事やバリアフリー工事のために貯金をしておく必要があります。
なぜなら、いずれは必要な費用が発生するからです。
さらに、将来予想できない出費に備えるためにも、一定の貯金を残しておくことが重要です。
例えば突然の病気やケガによる入院、倒産や解雇による退職などが起きた場合、予期せぬ出費が生じる可能性があります。
そのため、手元に一定の貯蓄を残しておくことは大切です。
貯金を残しておくべき金額の目安としては、日常生活費の半年分が挙げられます。
たとえば、毎月の生活費が15万円であれば、90万円前後を口座に残しておくことが適切です。
これにより、万が一の事態に備えることができます。
頭金があまり貯まっていない場合
頭金がまだあまり貯まっていない場合には、次の3点を押さえておきましょう。
頭金ゼロでも家は買える
以前は、住宅ローンを利用して購入できるのは物件価格の7~8割程度が一般的でした。
そのため、「物件価格の2割しか借りられない」という考え方が根強く存在しているかもしれません。
しかし、現在では、物件価格の全額を借り入れることができる金融機関が増えており、フラット35なども物件価格の全額を貸し出してくれる商品となっています。
そのため、頭金として物件価格に充当する自己資金がなくても、フルローンで住宅を購入することが可能です。
住宅を購入する際には、物件価格の約10%程度の諸費用がかかる場合がありますので、その分の資金を事前に用意しておくことが理想的ですが、諸費用を含めて借り入れが可能な金融機関も存在しています。
頭金を貯めてから買うより、早く買ったほうがトクな場合もある
頭金を準備してから住宅を購入するメリットは、ローン借入額が少なくなることにより金利の負担が軽減される点です。
しかし、住宅を購入するまでの間に支払い続ける家賃の負担を考慮すると、実際には早めに購入する方が得な場合も多いのです。
その理由は、現在の住宅ローン金利が非常に低いからなのです。
頭金を貯めながら支払い続ける家賃よりも、頭金が少ない状態で借入した際の金利負担の方が多くなることが多いです。
また、頭金を貯めている間に消費税が上昇したり、住宅ローンの金利が上がった場合は、即座に購入する方がよりお得になります。
家賃が高い人や、家賃の支払いと同時にたくさん貯金できない人にとっては、早い段階で住宅を購入する方が経済的に有利です。
逆に、勤め先の社宅や実家で格安で住むことができる場合などでは、頭金を貯めてから購入する方がお得です。
頭金が少ない場合の注意点
頭金が少ない場合には、購入する物件を慎重に選びましょう。
頭金が少ない場合には、返済負担が大きくなる可能性があります。
しかし、無理をせずに購入できる物件を選ぶことで、将来的な負担を軽減することができます。
次に、金利上昇に不安がある場合には、全期間固定金利のローンを選びましょう。
金利は市況や経済情勢によって変動するため、将来的に上昇する可能性があります。
全期間固定金利のローンを選ぶことで、将来の金利上昇による追加の負担を避けることができます。
最後に、長めのローン期間を選ぶことも検討してください。
長めのローン期間を選ぶことで、月々の返済額を抑えることができます。
ただし、長期間にわたって返済をすることになるため、総返済額が増えることになります。
自分の経済状況や将来の計画に合わせて、最適なローン期間を選びましょう。
これらの注意点を踏まえて、自分に合ったローンを選ぶことが重要です。
将来的な負担を考慮し、無理のない返済計画を立てることが大切です。
無理なく購入できる物件を選ぶ
頭金が不十分で多額の借り入れをすると、住宅ローンの金利が上昇し、それによって返済額が増加する可能性があります。
この場合、大きな悪影響を受けることになります。
ですから、購入する物件をしっかりと選び、頭金と借入額をバランス良く考えましょう。
さらに、金利が上昇しても返済が困難にならないように、十分な余裕を持った選択をすることが重要です。
金利上昇が不安であれば全期間固定金利
フラット35などのローンは、返済額が上昇する心配がない点が大きなメリットです。
もし借入金額が多く、将来の金利上昇が不安な場合は、全期間固定金利を選択することで安心感を得られます。
全期間固定金利は、借り入れ金利が契約期間中ずっと変わらないため、借り入れ期間中の金利上昇による返済増加のリスクがなくなるということです。
このようなローンを選ぶことで、将来の経済面の不安要素を軽減することができます。
出来るだけ長めにローンを組む
住宅ローンを借りた後、返済が厳しくなってしまった場合、早めに期間を延ばすことは容易ではありません。
しかし、ローン期間を可能な限り長く設定し、余裕が生まれたら繰り上げ返済を行っていくことは、経済的に安心感を得る方法です。
貯金をすべて頭金にしない
「貯金しているお金があるけれど、頭金としてどのくらい使ったらいいか迷っています」というのも悩ましい問題です。
頭金を多くすると、ローンで借りる金額が減り、毎月の返済額も減るため、支払総額も少なくて済むことは明らかです。
さらに、金融機関によっては、頭金の割合が多ければ金利が優遇されることもあります。
例えば、フラット35という住宅ローンは、頭金が10%以上だと金利が低くなるのです。
しかし、すべての貯金を頭金にするのではなく、少し残しておくことをオススメします。
病気など万が一のために残しておく
病気や怪我などで労働ができなくなるかもしれないし、予想もしない出来事が起こるかもしれないので、生活費を3ヶ月分程度のお金として備えておくことは重要です。
もしもの時に備えて、しっかりとお金をためておきましょう。
教育ローンやマイカーローンは住宅ローンより金利が高い
家を購入した後は、新しいマイカーを購入する予定や将来の教育費についてしっかりと見積もりを立て、それに基づいて貯金を残しておくことが重要です。
家を購入した後に貯金が底をついてしまい、マイカーローンや教育ローンを組まなければならなくなると、結果として無駄な利息を払うことになります。
また、住宅ローンの金利は他の借り入れと比べて圧倒的に低いため、資金の使い方に工夫をすることが大切です。
住宅ローンよりも高い金利で運用すれば収益になる
家を購入後は、住宅ローンの返済を継続しながら、将来の老後の資金も確保しなければなりません。
現在の住宅ローンの金利は非常に低く、一部の人は1%以下の金利で借りることができる場合もあるので、住宅ローンよりも高い利回りで投資することも可能です。
ただし、投資信託などの高利回りの金融商品は元本が保証されていないことを覚えておいてください。
そのため、投資にリスクを抱えることに抵抗がない人は、資産の一部を積極的に投資することが有利であると言えます。
ただし、投資には市場の変動や投資商品の価格変動による損失のリスクがあるため、慎重に考える必要があります。
そして、投資の選択は十分に情報を収集し、自身の投資目標やリスク許容度を考慮した上で行いましょう。
住宅ローンは万が一のときには団信で免除
住宅ローンを組む際には、ほぼすべての金融機関で「団体信用生命保険」への加入が必要となります。
この「団体信用生命保険」というのは、住宅ローンを借りた方がもし万一亡くなったり高度障害になった場合に備えて支払われる保険です。
つまり、もしもの時には住宅ローンの返済が免除され、生前に築いたマイホームを家族に残すことができます。
このため、「団体信用生命保険」を利用すると、頭金として使うための貯金をわざわざ確保する必要はなく、できるだけ多くの住宅ローンを借り入れることで、保険の機能を最大限活用するという考え方もあります。
頭金を親から贈与時の非課税制度
両親が家の購入のためにお金を援助してくれる場合、贈与税について考慮する必要があります。
年間の贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。
しかし、この金額を超える贈与を受ける場合は、非課税の制度を上手に活用する必要があります。
このために、「住宅取得資金の贈与税の非課税制度」と「相続時精算課税制度」という2つの制度が存在します。
これらの非課税制度の詳細を紹介し、さらに非課税制度を利用しない場合の贈与税についても解説していきます。
住宅取得資金の贈与税の非課税制度
もし、親や祖父母から住宅を購入するのに必要なお金を贈与してもらった場合、一定の金額までは贈与税がかからない制度があります。
ただし、配偶者の両親からの贈与には適用されません。
この制度は「暦年贈与」と呼ばれ、年間で110万円までの贈与が非課税となります。
具体的な非課税限度額は、購入する住宅の性能や取得の時期によって異なります。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度とは、贈与税に関する制度の一つです。
この制度では、2500万円までの贈与は一度非課税となりますが、相続が発生すると、その贈与した財産は相続財産に加算され、精算課税されることになります。
つまり、相続時精算課税制度を利用すると、贈与した財産が相続された場合に精算課税が行われます。
この制度では、贈与した財産の価値が相続財産に加算され、それに応じた税金が課されます。
ただし、相続時精算課税制度を利用する場合、毎年110万円まで非課税になる「暦年贈与」を利用することはできなくなります。
暦年贈与は、年間で一定額以下の贈与を行う際に課税を免除する制度であり、相続時精算課税制度を選択することでこの特典を利用することはできなくなります。
贈与税の計算方法
最後に、非課税制度を利用せずに贈与税の金額を詳しく見ていきましょう。
例えば、非課税制度を使わずに500万円を贈与受けた場合、まずは基礎控除額の110万円を差し引きます。
その結果、残りの390万円に対して贈与税が課税されます。
この贈与税額を計算するために、差し引かれた110万円を除いた金額を速算表に当てはめます。
兄弟間、夫婦間、父母から未成年の子への贈与のケース
もしも他人から500万円の贈与を受けた場合、贈与税額は53万円となります。
贈与税の計算方法は以下の通りです。
まず、贈与税の課税ベースを計算します。
贈与税の課税ベースは贈与された金額から非課税枠(110万円)を差し引いた金額となります。
その後、課税ベースに対して税率(20%)をかけます。
さらに、税率にかかる限度額(25万円)を差し引いた金額が最終的な贈与税額(53万円)です。
また、夫の名義である家について、妻の両親から贈与を受けた場合など、贈与税の計算には別の税率が適用されます。
祖父母や父母などから20歳以上の子・孫への贈与のケース
20歳以上の子が、父母や祖父母から500万円の贈与を受ける場合、贈与税額は48.5万円になります。
贈与税は、贈与された金額から非課税枠の110万円を差し引いた金額の15%を計算し、さらに10万円を差し引いた金額となります。
具体的な計算方法は以下の通りです。
贈与された金額:500万円 非課税枠:110万円 課税対象となる金額:500万円 – 110万円 = 390万円 課税金額:390万円 × 15% = 58.5万円 差し引き:58.5万円 – 10万円 = 48.5万円 以上の計算により、贈与税額は48.5万円となります。
贈与を受ける際には、この税金を支払う必要があります。
なお、この計算方法は一例であり、実際の金額や税率は個別の場合によって異なる可能性がありますので、税務署や税理士に確認することが重要です。
まとめ
頭金とは、家を購入する際に支払う最初の入金額のことです。
通常、購入する家の価格の10%が目安とされています。
これは、家の値段に加えて、手数料や税金などの諸費用の一部をカバーするための金額です。
諸費用は、住宅ローンで借りられる金額に含まれる場合もありますが、できるだけ自己資金で準備した方が金融機関の選択肢も広がります。
頭金が少ない場合でも、家を買うことは可能です。
ただし、その場合は無理なく購入できる物件を選び、長期にわたるローンを組むことをおすすめします。
頭金がある場合でも、貯金は使い切ることは避けましょう。
将来的な予期せぬ出費や生活費の維持のためにも、貯金を残しておくことが重要です。
また、家の購入には値引き交渉の余地もありますので、積極的にチャレンジしてみてください。
物件の価格を抑えることができれば、頭金の割合を減らすこともできるかもしれません。
ですので、値引き交渉はぜひ検討してみてください。